今回のことば 「おちる」「おりる」
お・ちる 【落ちる・墜ちる・堕ちる】
自上一お・つ(上二)
❶支えるものもなく、ものが加速度的に下に移動する意。
①上から下へ急に位置が変わる。落下する。墜落する。
②降る。
③花・葉などが散る。また、涙などがこぼれる。④日・月が沈む。没する。
⑤光や視線などが、あるものに注がれる。また、影などが物の上に映る。
⑥勢いよく降りる。また、風が吹きおろす。⑦くずれおちる。こわれる。
❷物事の程度が急にさがる。
①おちぶれる。零落する。
②堕落する。
③衰える。減る。
④低くなる。劣る。
❸物・事柄・人などがある所からなくなる。他へいってしまう。
①ついていたものがとれてなくなる。欠ける。
②もれる。ぬける。
③熱・つきものなどがとれる。癒える。
④力などがぬけてなくなる。失せる。消える。
⑤戦いに負けなどして逃げ去る。また、都から離れて地方へくだる。
❹《堕》(穴などにおちこむ意から)仕かけ・はかりごと・罪悪など、また、抜きさしならない状態、昏睡状態などにはまりこむ。
❺《落・墜》物事がある終局にまで達する。
①精進が終わる。
②問いつめられて自白する。
④くどかれて意に従う。なびく。
⑤けもの・鳥・魚などが死ぬ。
❻《落》物・事柄の所属・結果がきまる。
①帰する。落ち着く。きまる。
②その人の所有となる。
③(多く「心に―・ちる」「胸に―・ちる」などの形で)納得する。了解する。
④収支決算がきちんと合う。
⑤(隠語)判決が確定して入監が決定する。
一般には「落」。墜落などの意には「墜」も、堕落などの意には「堕」も使う。
お・りる 【下りる・降りる】
自上一お・る(上二)上から下への移動を示すが、到達点に焦点をおく点で「さがる」と異なり、目的・意図のある作用を示す点で「おちる」と異なる。
①高い所からだんだんに移って下の位置・場所に着く。また、そのような状態になる。
②車・舟などの乗物から出る。
③貴人の前から退く。退出する。
④位を退く。職を辞す。役がらをことわる。
⑤勝負事などで、参加する権利をすてる。また、役から退く。「つきが回ってくるまで絶対に―・りない」
⑥《下》役所などから指示や決定などがくだされる。
⑦《下》体内から、下に出る。
⑧露・霜・霧などが置く。
⑨固形物が磨すられて粒子状になる。
用字で、「下」は「上」の対、「降」は「乗」「登」の対になる意味の場合に使うことが多い。
(『広辞苑 第七版』)
ことばからの気づき
今回はこの言葉から、阿弥陀仏のお慈悲について味わいます。
毎日、猛烈な暑さが続いています。この暑さを「地獄の釜が開いたようだ」と表現することがあります。地獄は猛火に満ちていることから、このように言われるようになったのでしょう。
もともとは、正月とお盆には閻魔大王と鬼たちが休むため、釜が開かれたことが由来です。「このときぐらいは、仕事を休んでゆっくりしよう」いう、ポジティブな意味で使われていた言葉です。
ところでみなさまは、地獄はどこにあると思いますか。「地獄に堕ちる」と言いますから、下にあるのでしょうか。善い状態からだんだんと悪くなっていって、結果として地獄に往く、上から下へという移動をするのが「おちる」という言葉に込められているように思います。地獄のような状態とは、今いるところから、状況が悪くなることなのかもしれません。
浄土真宗のことば:げんそう 還相
往相に対する語。還来穢国の相状という意。浄土に往生した者が、再び穢土に還り来て、他の衆生を教化して仏道に向かわせるすがたのこと。また、従果還因の相状の意で、往生成仏の証果を開いた者が、果より因に還り、菩薩の相を現して自利利他の徳を示現することをいう。
(『浄土真宗辞典』本願寺出版社)
ことばを味わう
阿弥陀仏の浄土に往生し仏と成るのは、到達点でなく通過点です。さとりを得た者の到達点は、いまだ迷いの中にいる、わたくしたち衆生を浄土へと導くために「降りた」先にあるのです。お念仏のなかに生き抜かれた人の到達点は、「今」「ここ」です。阿弥陀仏の願い、救いのはたらきである、「南無阿弥陀仏」の声となって私の身に「おりて」きて、導き続けてくださっています。
今回のまとめ
- 私は「おちる」道を歩んでいる。
- 真実の慈悲は、浄土からいま、ここに「おりる」。